その一つとしてソノマのジャズソサエティがニューオリンズのミュージシャンのカップルを招待して、チャリティコンサートを開催。妻が黒人のシンガーで夫は白人のギターリスト。息の合ったジャズの真髄を味あわせてくれる。楽譜にしたがって歌いギターを弾くだけではなくて、二人が歌とギターで競い合いながら即興 を交えて舞台を繰り広げるのだ。
キムとビルのカップルは数年前にソノマへコンサートツアーでやってきている。婚約中の熱々カップルで、彼女はとってもシャイだった。この二人のニューオリン ズの家がハリケーンで破壊されてしまったのだ。今回は2歳になる女の子を連れての訪問だった。ジャズソサエティがこの二人のためのチャリティとして、二人 を招きホテルを提供、チケットの売上げ、募金を二人に寄付するという企画だった。
キムの優しかった声に深みと迫力が加わっていた。ニューオリンズで注目を浴びているアーティストで、賞ももらっているという。 会場は小さくもなく大きくもないので、ギターと声で心を通わせて作り上げるニューオリンズの生粋のジャズをまじかに堪能できた。
「ニューオリンズは必ず復活します!」と彼女は宣言。大きな拍手を受けてキムは歌いながら泣き出してしまった。
ワイン産地、ソノマでのコンサートだから、当然なのだけれど、お嬢さんの教育資金にしてほしいというので、即興のワインオークションが開かれた。 ボトルを見せながら生産ワイナリーの名前と品種を読み上げ出すや否や、私の横に座っているジョンが「100ドル!」と大きな声で叫ぶ。私はどんなワインかを知ってから手をあげようとしているのに、わからないままに競売が進んでいく。
「ジョン、もう少し待ってから声を出してよ、もう!」と私。
「こういうのは勢いがよくなくちゃ!」とジョン。
それでも1.5Lの85年のローレル・グレンが出たときは、私はそれが飲みたくて200ドルというのを聞いてさっと手をあげた。そうしたら即席のオークショ ニアを務めていた友達が吹き出して、「自分のだんなが造ったワインをオークションで競ってるなんてはじめてみたよ」と大声で言うものだから、みんながげらげら。レイが後ろで「僕の懐がいつも貧しいわけがこれでわかっただろう」とランドムリッジ・ワイナリーのビルに言っているのが聞こえた。振り返ると、ビル が納得したような顔で笑っているではないか。私は「あれ?それって不思議なことなんだっけ?」とちょっと躊躇している間に他の人の手に渡ってしまった。
友人のランスの家にはニューオリンズのアーティスト、エリックが3ヶ月滞在するという。大きなニュースにはならないけれど、個人レベルで災害にあった人たちをさりげなく助けている人々が大勢いる。