2007年5月25日金曜日

初夏


ブドウ樹の若々しい緑色の枝が順調に成長している。枝の根元の部分は濃い緑、先のほうが透き通るような若葉色で埋め尽くされたブドウ畑は夕日を浴びて心が清められるような美しさだ。またしても「なんてきれいな土地だろう」とつぶやく。今、ブドウ樹はかわいい花を咲かせている。遠めには見えない。ブドウ粒になる花が葉の影でひっそりと咲いているのだ。畑を良く見回って歩く人はブドウの花の香の話しをしてくれたけれど、残念ながら私はそまだの香りを感じたことがない。
今年の冬は雨が少なかったことから、旱魃(かんばつ)気味になるのではと心配する声も聞かれたけれど、大きな心配事ということではなさそうだ。

今日は何事にも一般化できない例外があるとあらためて感じた3つの話題。 マウント・ヴィーダー(頂上がナパ・ヴァレーとソノマ・ヴァレーの境界線になっている)の頂上でブドウ栽培しているランドム・リッジというワイナリーがある。オーナーのビルが、彼のサンジョヴェーゼが3月の霜にやられたと嘆いていた。「僕の畑の栽培条件は低地の畑とはまるで違うんだ。もともと収穫量の少ないサンジョヴェーゼが今年はもっと少なくなってしまう」とがっかりしていた。こういう畑が霜やられたことなんか、新聞では取り上げないから、一般的には順調な春ということになる。

もう一つはオーストリアのワインジャーナリストのルジアとディナーをする機会があったときのことだ。一般的にヨーロッパではワインは常にディナーの一部として楽しまれていると思われている。私もそう信じていた。ところがルジアは「オー!ノー!、それは南ヨーロッパのことよ。特にフランスや地中海地方のことよ。北ヨーロッパはそうじゃないわ」と言う。オーストリアではアルコールは酔うために飲むもので、特別にワインが好きな人以外はディナーでは飲まない。飲むワインといったら、安いからというので国産のまずい白を飲む人が多いと嘆く。最近、世界的に高く評価される白ワインが生産され始めているけれど、それもほんの一握りのワイナリーで留まっているというのだ。フーン、なるほどね。ヨーロッパという言葉でひとくくりには出来ないのだなと、学んだ次第。

先週、西オーストラリアのテイスティングに行く機会があった。オーストラリアワインというと、カンガルーのラベルとか、バロッサヴァレーで生産されるこってりシラーズを典型的なワインと思っていた。(もっともこういうイメージを作り上げたのは、アメリカのメージャーワイン誌の責任という声もあるけれど)西オーストラリアは涼しい。そのため手ごろな価格の良質なリースリングが生産されている。カベルネはどちらかというとパーカーが有名になる前のボルドーによくあった、ちょっとアニスっぽい香りがする軽いタイプのものなのだ。シラーズはピノ・ノワール風な軽いタイプだし、シャルドネはミネラルの味わいがするクラシックなタイプのものが多かった。シャルドネの熟成具合はとてもよかった。(詳細はメンバークラブのサイトに記載)「ああ、オーストラリアのワインね」と一般化することはできないんだと当たり前のことを再認識。

いくつになっても学ぶことは尽きない。「ああ、カリフォルニアワインね」という一般化に当てはまらないことが多いということを、多数の方に知ってもらうのも私の役目の一つかもなんて、殊勝な気持ちになったというお話。