2008年10月30日木曜日
将来が楽しみなサンタ・バーバラ
サンタ・バーバラ・カウンティのロス・アラモスにあるメルヴィルのヴァーナスヴィンヤードを訪れることになっていた。メルヴィルはサンタ・リタ・ヒルズという脚光を浴びている栽培地区にあるプレミアムワイナリーの一つだ。サンタ・マリアの町を出て州道101号線を南に走る。間もなく、ロス・アラモスという村の標識が見えて、左手にキャット・キャニヨンという道の標識に従って左折。待ち合わせの10時30分。インディアンサマーということでカリフォルニア州全体の気温があがっていた。10時30分だというのに真夏の暑さだ。左折するとすぐに後ろにSUVがついて来て追い越した。こんな田舎道を走る車はまれだ。運転手の顔がチラッと見えた。ブドウ畑を案内してくれることになっているステフェンだった。彼は私だと気づかないで追い越して、しばらくしてから気がついたらしくスピードを落とした。
ロス・アラモスはちょうどサンタ・マリア・ヴァレーとサンタ・リタ・ヒルズの真ん中に位置している。多分気候も真ん中当たりだろう。
101号線からは想像もつかない、広大なブドウ畑が砂丘を覆っている。ひとつはナパのサターホームがブドウ畑を所有、主にシャルドネを栽培。朝早くに摘んで、トラックでナパまで運ぶのだとか。もうひとつはホワイト・ホーク・ヴィンヤードというブドウ園だ。
10月中旬、まだ収穫中だ。明日摘む予定だというシラーのブドウ粒を噛んでみた。ナパのブドウと比べると甘さが感じられない。糖度は24度ブリックスというから十分に上がっている。甘さが感じられない理由は酸が多く含まれているからなのだ。驚いたことに土は砂地だ。丘陵地の低い箇所は沖積土だ。火山性の土壌はない。海底の断層が隆起して出来上がった土地だからだ。「ビーチみたいですね」と思わず言ってしまった。やせた土がブドウ栽培には適しているとはいっても、これだとあまりにも水はけが良すぎて栄養分も足りないだろう。
主にシラー(65%)そしてシャルドネ、ピノ・ノワール、少しのヴィオニエを植えていたけれど、おりからのピノ・ノワールブームで、ピノ・ノワールに変えている。今はピノ・ノワールとシャルドネがほぼ同じ率で、シラーは20%、ヴィオニエが15%だという。
約10年前にキャット・キャニヨンに100エーカーを買って、ヴァーナス・ヴィンヤードと名づけた。もちろん買ったときには砂丘で地にへばりつくような草が生えているだけだった。この地はドリップ・イリゲーションがなければ、何も栽培できないだろう。ドリップ・イリゲーションは1959年にイスラエルの砂漠での栽培のために開発された。ブドウ栽培はもとより農業界にとってはノーベル賞ものだと、サンタ・バーバラ・カウンティへ来てつくづく思う。
お金とアイデアと良いワインを造ろうというパッションを持った人たちがサンタ・バーバラ・カウンティにワイナリーをオープンし始めている。これから目が離せないエキサイティングなワイン産地になりそうだ。
詳細はニュースレターに書きます。
2008年10月23日木曜日
ハピー・キャニヨン
サンタ・バーバラ・カウンティはまだブドウを摘んでいた。北カリフォルニアより収穫が終わる時期が遅いので、驚いた。サンタ・バーバラ・ワイン・カントリーは冷涼な地区と思いがちだけれど、ブドウ栽培、ワイン生産の経験を積むに従って、気候の細分化が進み、温暖な地区と冷涼な地区とが明確に区別されている。
サンタ・イネズ・ヴァレーは温暖な地区なのだ。だからソーヴィニヨンとか、ボルドー系品種、シラーが植えられている。
映画「サイドウエイ」で主人公が女性二人と食事をする場面にロス・オリボスの洒落た小さな町のレストランが使われている。このレストランに入る前にピノ狂の主人公が「メルローなんか絶対に飲まない!」と言ったのが、話題になって、メルローの売上に響いたものだ。この町からサンタ・イネズという小さな町に沿って豪華な農場が並び、とってもきれいだ。サンタ・イネズ・ヴァレーにハピー・キャニヨンと呼ばれる地区がある。ここにあるブドウ畑、スター・レーンを朝8時に訪れた。朝だというのに、大きな太陽が強い日差しを注ぐ。確かに暑い地区だ。スター・レーンの畑は中途半端じゃない。山のてっぺんにきれいに手入れをされたブドウ畑がパッチワークのように広がる。この地区にもナパほどの数ではないけれど、資本が投入され始めている。詳細はニュースレターに書きたい。
2008年10月16日木曜日
セントラル・コーストの2つのワイン
11月中旬に東京と大阪でソムリエ協会主催のサンタ・バーバラ・カウンティのワインセミナーの講師をさせていただくことになっているので、1週間、サンタ・バーバラ・カウンティにいる。よく耳にするブドウ畑についてもある程度、土地勘がついた。道はナパのように混んでいないし、リラックスして走ることができるのが嬉しい。映画「サイドウエイ」以来、高い人気を持つピノ・ノワールが造られているサンタ・リタ・ヒルズとそこにある小さな街にもすっかり馴染んだ。サンタ・バーバラ・カウンティへ行く途中で海辺の町に住んでいる友人宅に寄った。イチジクを使ったラムの料理、アルグラとゴンゾーラチーズのサラダ、プチトマトにモッツレーラチーズをつめてバジルのみじん切りを飾った前菜を自ら料理してごちそうしてくれた。この料理にマッチすワインとして、近くのスーパーでセントラルコーストのシラーとソーヴィニヨン・ブランを買った。アロヨ・グランディにあるタリーはかんきつ類の香りと味が程よいシャルドネと派手さを抑えたピノ・ノワールを造るワイナリーとして知られている。ソーヴィニヨン・ブランはどうかなと思ったけれどなかなか美味しかった。シラーはパソロブレスにあるアデライダ。パソロブレスは温かい地区のジャミーなシラーの産地といわれているけれど、このワイナリーは、多分、高地に畑があるのだと思う。なぜなら十分に熟したブドウの味なのだけれど、程よい酸味がきちんと感じられたから。前菜にソーヴィニヨン・ブランはよくマッチ。香りがあまりないかなとふと思っていたのだけれど、空気に触れるにつれて、香りが立ってきたし、酸味にサポートされたフルーツの味が美味しく楽しいワインになってくれた。シラーもイチジクの入ったラムにぴったり。こちらも酸がきれい。女性の顔が印象的なラベル。
酸味が特色のワインを飲みにサンタ・バーバラ・ワインカントリーへ行く助走の楽しいディナー。
2008年10月11日土曜日
グラス一杯のワイン
このところ、ラジオもテレビも株式市場暴落のニュースと選挙のニュースばかりだ。アメリカの金融市場低落の影響が日本にもヨーロッパにも影響しているらしい。
不景気だから、やたら高くなったガソリンを買うのを控える市民が多くなったために、今度はガソリンの値が下がり始めている。ソノマの町にある唯一の洗車場は閑古鳥が泣いている。数ヶ月前までは、いつも長い列が出来ていたものだ。こういう暗いムードのときに、ワインを呑む人がいるのだろうか?ぜいたく品だからっていうので、ワインを控える人もいるかもしれない。
プラザにあるカフェに寄ってみた。ランチ時以外は、ここもがらんとしている。オーナーのジェイムズは晩秋から来年にかけて、カフェ&ワインバーにしたいと張り切っている。比較試飲できる小さなグラスが6個入るかわいいバスケットを目を輝かせて見せてくれた。「今日は朝の10時からワインのテイスティングをしてるんだ」とご機嫌。ボトルを2本手に持っていた。ひとつは値ごろ感が会って好きなタイプのオレゴンのピノ・ノワールだ。「あっ、ウイラケンジ、いいね」といったら、大振りのグラスを持ってきて、なみなみと注いでくれた。サワーチェリーキャンデーの味がして、3時のお茶時間帯に飲むのにぴったり。すきっ腹に飲んだから、全身にすばやく回って、ふわふわ気分。Willakenzieのワインは白も赤もグッドヴァリューだ。
ご機嫌でスーパーへ夕食の買い物に行く。たったグラス一杯のワインがとっても幸せな気持ちにしてくれた。不景気だからせめてワインでも飲んで気晴らししようよっていう感じかな。
2008年10月5日日曜日
ハーベスト、不景気、選挙
もう10月になった。ハーベストは終わりに近づいている。ローレル・グレンは10月1日(水曜日)に終了。とても短期間のハーベストだった。毎日車で通過する道沿いにあるブドウ畑(ケンウッド・ワイナリーの畑)は、例年だと、「わあ、まだ摘んでない」と思いつつ見るのだけれど、今年はローレル・グレンより先にブドウの房が消えていた。ローレル・グレンは山の中腹に畑がある。太平洋が近く、晩熟品種であるカベルネを栽培しているので、通常、摘む時期が遅いのだ。それが、今年はもう終わってしまった。道沿いの畑を見て気がついたのだけれど、早くにブドウを摘み取った畑のブドウ樹の葉はまだ青々としている。糖度があがったので、もう少し置いておきたいと思っても摘むしかなかったのかもしれない。
そして昨日と今日、雨が降った。
近所のブドウ畑の所有者は今週末に摘むといっていたけれど、雨で摘めなかっただろう。彼は小さなよく知られるワイナリーの醸造責任者なので、週末しか自分のワインを造れない。それに友達を呼んで摘むから、週末しか手伝いに来れないのだ。個人経営の小さなワイナリーならではの難しさだ。
アメリカの経済システムが破壊されそうな雰囲気で、不景気風が吹いている。ガソリンは高いし、失業率も高い。我が家の近所の通りに売り家の札が数件見られる。こんなのは20年以上、この土地に住んで初めてだ。この影響がワイナリーにも徐々に出てくるのだろうな。
かつてない高い視聴率だったという副大統領のテレビ討論を友人の家で見た。テレビにかじりつきの私のために友人の夫は料理をしては、わざわざ運んでくれるという親切さ。
このとき飲んだ2つのピノ・ノワールはとても美味しかった。
サンタ・バーバラ・カウンティ、サンタ・マリア・ヴァレーの
J.Wilkesとアンダーソン・ヴァレーのBreggoのピノ・ノワール。小さなワイナリーだ。どちらも涼しい地区のピノで、酸味がきれい。それでいて十分に熟したブドウの味がある。涼しい地区だから酸を保ちながら、ブドウが熟するのだろう。
不景気はブッシュ政権の責任だから、選挙は民主党に有利。でも初の黒人大統領をアメリカの市民は認めるのだろうか。カリフォルニア、そしてソノマはなんていったって、リベラルな人たちが多いから民主党候補のオバマが勝つ。彼はとてもハンサムだよね。頭もすごくいいしね。
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